まだ抱いておったのか

昔あるところに高名な禅僧がおりました。
彼が若いころ、友人の僧侶と二人で旅をしていました。

田舎の道を歩いていくと、
目の前を川が横切っています。
橋はかかっていません。

川幅も広くなく、深さもそれほどではなかったので、
川につかって歩いて渡るしかないと思っていたところ、
近くで若い女性が川を渡ることができず、
困っていることに気づきます。

「わたしの肩につかまって」

その僧侶は女性を抱きかかえ、川を渡りました。

女性は感謝しましたが、
その僧侶はそのことに特に気にもかけず
さっさと友人の僧侶とその先を歩いていきました。

しばらく歩いていくと、
不機嫌そうにしていた友人の僧侶が言います。

「お前はけしからん、僧侶の身でありながら若い女性を抱くとは!」

それに対し、

「ん、なに、若い女性?どこにおる?」

「なにをとぼけている、さっき川で女性を抱きかかえて渡したではないか!」

「はっはっはっ、あの女性のことか、私はさっき、女性を川を渡して、おろした。

おまえは、あれからずっと、まだ、あの女性を抱いておったのか。」

...

というお話。

わたしたちは、
ずっと持ち続けなくてもよいものまで
まるで大切なものかのように
抱え続けてしまうことがあります。

明日がよい日でありますように☆